The Tales Of Sanmi-No-Tyujyou
 古もの尽くし

左大臣邸

女二の宮の辺り。
帰ってみると、宮は琴の琴でお遊びの様だった。
何か音もそぞろなのは、早く報告せよとの合図なのかしら…


宰相の君
「…宮さま。今日は私、素晴らしい方にお会いしましたわ。」




女二の宮
「まあ…琴のついでに聞かせておくれ。」




宰相の君
(ついで…)
 それは健やかなお方で、物腰はお静か。
 ここではあまり見かけぬお方かもしれませんわ。」



衛門
「宮さま。その次は上の弦でございますよ。」




女二の宮
「ええそうね、命婦。
 それで…その方は誰かを引きとめられて?」



宰相の君
「はい。そのような不埒な女房は侍っておらぬように見えましたが、
 何より上にあがられるお方だけあって、十分なお可愛らしさでしたわ。」



衛門
「宮さま。失礼ながら、ついに…という感じで乱れておりますわ。」




女二の宮
「命婦、わたくしはちゃんと弾いているではない?」




衛門
「………」




女二の宮
「それで、その、ここに住む人は皆、
 夢中になりそうなのかしら、その人に…」



宰相の君
「いいえ、それは好みの問題かと。」




女二の宮
「好み?それはそんなに確かなものなの?」




宰相の君
「そうです。ことに中将様は
 艶君がお好きですが…」



女二の宮
「えん…くん?」




衛門
「宰相の君。」




宰相の君
「つまりは論外ということですわ、宮さま。
 
(だってまだ童ではないの。)



女二の宮「論外…まあいいわ。
 お前の口から、それほどの言葉が出るのなら
 それは確かなことなのでしょう。それならば!!」



宰相の君
「それならば?」




衛門
「それならば?」




女二の宮「わたくしも誰か優れた人をあちらへやって、
 力添えといたします!
 宰相の君、いかがかしら!」



宰相の君
「………」



数日後の夜へ


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