The Tales Of Sanmi-No-Tyujyou 古もの尽くし |
左大臣邸
女二の宮の辺り。
帰ってみると、宮は琴の琴でお遊びの様だった。
何か音もそぞろなのは、早く報告せよとの合図なのかしら…
「…宮さま。今日は私、素晴らしい方にお会いしましたわ。」
「まあ…琴のついでに聞かせておくれ。」
「(ついで…)
それは健やかなお方で、物腰はお静か。
ここではあまり見かけぬお方かもしれませんわ。」
「宮さま。その次は上の弦でございますよ。」
「ええそうね、命婦。
それで…その方は誰かを引きとめられて?」
「はい。そのような不埒な女房は侍っておらぬように見えましたが、
何より上にあがられるお方だけあって、十分なお可愛らしさでしたわ。」
「宮さま。失礼ながら、ついに…という感じで乱れておりますわ。」
「命婦、わたくしはちゃんと弾いているではない?」
「………」
「それで、その、ここに住む人は皆、
夢中になりそうなのかしら、その人に…」
「いいえ、それは好みの問題かと。」
「好み?それはそんなに確かなものなの?」
「そうです。ことに中将様は
艶君がお好きですが…」
「えん…くん?」
「宰相の君。」
「つまりは論外ということですわ、宮さま。
(だってまだ童ではないの。)」
「論外…まあいいわ。
お前の口から、それほどの言葉が出るのなら
それは確かなことなのでしょう。それならば!!」
「それならば?」
「それならば?」
「わたくしも誰か優れた人をあちらへやって、
力添えといたします!
宰相の君、いかがかしら!」
「………」
auther:Toukai Karinoko
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