inheritance
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「俺はもう此処から先へは進めない」
この旅の間ずっと歩調をあわせおれの後ろを守るように歩いていた男の足がピタリと止まる。
「え、何言ってンだ?あとはもう1本道、これ抜けたら目的のモンは手に入るんだぜ。」
それがあればこいつを癒してやれる。闘えないはずの身体を押してこんな場所につれて来た意味がない。
世界中に封じられたいくつかの大いなる遺産。おれたちの太陽を見つける為に探り当てた、伝説にも僅かにしか残らぬモノ。それらを調べる内みつけた魔法のひとつ。
それがここに、在る。
「おい、ヒュンケルてめぇの為に来てるんだぞ。
てめぇが来なくてどうする」
継承が上手くいくとは限らない。
神さんってのは人間に甘く厳しいモンだってのはいままでに挑戦した《遺産》で身に染みてる、イタイ目には何度もあった。
でも、ここは失敗しても泉が…
「俺は先に行くことができないんたポップ」
いつも不孫な態度を崩さない兄弟子が自分の足元を見つめて繰り返す。
「なんでだ?またいつかのように後ろからヤバイもんが迫ってるから此処で食い止めるっとか馬鹿な事言うんじゃねーだろうな?」
ヒュンケルが立ち止まってる所まで引き返す
「それならどんなにいいか。」
苦い顔をしていた。
「違う。危険はない。
だが、ダメなんだポップ俺には道がない。
この先お前の役にたつことができないとは… 」
じゃなんで?
「ポップ本当にないんだ」
そう言うとおもむろに鞘から剣を抜き、地面に突き立てた。
スウ…
手応えなく床に吸い込まれる。確かに在るのに。おれは立っている場所なのに。
「拒まれた、か。」
引き抜いた剣を鞘に収めヒュンケルはおれに手をのばした。
あ、ああ。そうか。ここまでなのか。
魔道をいく者とそうでない者。純粋な魔力への耐性。
此処のカミサマは大層シンセツだな。
…でもコイツがいないと、意味が無いのに。
此処にはあらゆるものを癒す泉があるという。
というより、その泉の中に継承の魔法陣があるというのだ。
だから。もし、継承に失敗しても…
波紋 てを のばす でも ふれる まえに
隔たりが
ある
魔法 が
「強く押せば破れる と思う。
が、この先は俺が踏み込んで良いと思えんのだ。」
波紋 波紋 波紋
「ずっと幻惑かと目を凝らしながらきたがこの先は本当に違うようだ。ポップ、この先はおそらく、お前の進む所だけが道なんだ。」
だから。
さあ、かまわず行けと。
俺たちのあいだを隔てている波立つ膜から手を離していう。
…失敗しても、泉 が
連れて行かないと。
連れていけないのかと。わかって いる
でも、もし…。
「待ってる。ここで。」
波紋もおさまり 静まりかえった膜のむこうで
いつものように 腹の立つほど落ち着いた顔で
このバカヤロウは
「わかった、ちゃっちゃと手に入れてきてやらぁ!
大人しく待ってろよっ!」
…………もし。失敗しても。
「ちゃんと帰ってくっからな。もし、まぁ...この天下の大魔道士様に限ってありゃしねぇと思うが…しくじっても万物を癒すという泉の水、汲んできてやる。
だからお前、実験台な。」
そう、明るく言い放つとおれはヒュンケルに背を向けて洞窟のおわり、光のある方へと歩き出す。
「んじゃ行ってくら!」
だから。ちゃんと、まってろよ
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