恵まれたひとはいるものだ。

光をうけて少女は思った。
愛される運命とは、あるものなのだわ。


   **愛されるひと**


勇者ダイである竜の騎士様の力に耐えうる剣を探すために、占いが示した土地は『ランカークス』。魔法使いポップの郷里だった。

ここが、ポップさんの生まれた土地。

「ちっちぇ村だぜ・・・」
武道家マアムの背中に隠れるように歩くポップさんは言葉とは裏腹に、愛しげに町を見ている。それを横目にながめながら、新しい土地へ行く何時のも習慣から言葉でなく言った。
(この土地のうるわしき方々へご挨拶申し上げます。竜の土地テランより参りました占い師メルル、ご領地にお邪魔いたします。)
(この地を訪れたことをとても嬉しく思います!)

後半は、何時もより心がこもっていたかもしれない。
「おっと!そこ右だ」

ポップさんの家。
ポップさんのお母さん。
ポップさんのお父さん・・・には驚いたけれど。
帰還の一幕がおさまって。一行は快く迎え入れられた。
家出息子の仲間である勇者と武道家が自己紹介をする後ろに、占い師は控えめにいる。彼らは息子の現状にこそ驚いたものの、勇者というものに畏れをもってはいないようで、それをそのまま受け止めているようだった。

(なんだか、ふしぎな人たち・・・。)

扉をくぐるそのとき、メルルの中に、歓喜がおこった。
粗野な精霊が胸を通りすぎていったのだ、
家が、土地が、愛し子の帰還に湧いている。
言葉にも成れずに、消えてゆくだけの、ささやかな想い。
(祝福されている・・・)
早くに父母と別れ、祖母とふたり定まらぬ暮らしをすることがあたりまえだったメルルにとって、それは夢のようなことだった。土地の霊が、彼の上で産まれた子供を愛し、見守り、育くむ。他愛のない、しかし優しい護りがここにはある。

しかしこの土地を、彼は棄てたのだ。
彼を愛する父を、母を、郷里を。
初めて彼のひとを残酷だと思った。
「ポップさんは酷い・・・でも」
それでも、きっとそれが彼の運命だったのだ。
想いの強さはとうに霊感をしのいでしまって、メルルにポップの運命は覗けない。
だが、それは確かなことだった。
勇者にとって、この時代にとって必要な人だ。
・・・そして私もポップさんを見つけた。


ポップさんの生まれ持った性質は光。
闇に属する魔法たちを従える者でありながら、その印象はどこまでも明るい光。
きっと、それこそがあの恐ろしいまでの力たちを人の器の虜にしている。
かれは愛されるひと。
私も、そのひとり、なのかしら。
得難いひかりに手をのばすだけの。
素朴な霊と通じながら、心にふと迷いが生まれる。
占い師であることを憎むのはこういうときだ。ただ望めればよいものを。




それでもかの人は愛しく眩しく、ただ憧れで。






メルル1人語り。
ポップさんが人外に愛される性質だと書きたかっただけ。

+++蛇足。
『想いの強さはとうに霊感をしのいでしまって、メルルにポップの運命は覗けない』
かつらに「なんのこっちゃかわからん」と言われました。占い師は自分の運命だけは見えないので、運命が重なる恋人とかも占えない、とか。そんなんだったような気がするのですが。それでなくても願望がまじるので占いは歪むんじゃないかと思います。そういう意味の一文でした。
 by.高雄