The Tales Of Sanmi-No-Tyujyou
 古もの尽くし

左大臣邸

翌朝。角盥や鏡なとを並べ
眠そうな女二の宮が女房に朝の支度を手伝わせている。
突然、がばっと顔を上げて。


女二の宮
「…心配だわ。そうよ。これはきっと浮気、なんだわ!」




衛門
「なんですか、宮様。お行儀がよくありませんよ。
 それにそのようなことのあろうはずがございませんよ。」



女二の宮
「そういう問題ではないわ。まだわからないの?命婦。
 これは普通のことではないのよ、きっと!」



衛門
「ほほほ、まあまあ。まさか宮さまをお見限りになるなど。
 そのようなことお出来になろうはずがございませんよ。」



女二の宮
「お前、年を取ったのね…。ああ、かわいそうに。
 でも、私にはわかるのよ…!」



衛門
「……宰相の君。」




宰相の君
「お呼びですか?」




衛門
「宮さまがお悩みです。お相手なさい。」




宰相の君
(また私に厄介払いを…)
 これはまあ、どのようなご用事でしょう?
 私にはあてき役は難しゅうごじますわ。」



女二の宮
「ああ、宰相の君。お前だけがたよりなの!」




宰相の君
「うれしゅうございますわ。どうしたことでしょう?宮さま。」




女二の宮
「いいえ。いいえ。女房のお前にはいえない事です。」




宰相の君
「…(じゃあ$私にどうしろと。)」




女二の宮
「でもお前も長年のわたくしの女房ならわかっているはず!」




宰相の君
(…だめね。完全にのってらっしゃる)
 まあ…!それはどうしたことでしょう、宮さま。」



女二の宮
「お前を北東の対の付きの女房にします。」




宰相の君
「は?」




女二の宮
「探ってらっしゃい!い・ろ・い・ろ・と!」



北東の対の屋(露草の君の辺り)へ


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