The Tales Of Sanmi-No-Tyujyou
 古もの尽くし

東北の対の屋(露草の君のいらっしゃる辺り)

御帳台の近く、お茵のあたりに沢山の几帳と数人の女房や屏風やらに囲まれて
露草の君はいらっしゃる。私は参ったばかりなので隅っこの柱の方にもたれかかっているのだ。
それにしてもここの女房って本当に静かよね。みんな何してるのかしら。
よく見えないわ…。


宰相の君
(本当に、宮さまってすごいわよねー。滅多に外にお出になれないからって
 こんなとこにお楽しみを見つけなさるなんて。お暇よね…。)



露草
「あら侍従。あそこに見慣れないかたがいらっしゃるわ。」




女房
「姫さま。あれは宰相の君でございますわ。評判の女房です。
 北の方さまが御親切にも書の指南役としておつかわし下さったのですわ。」



宰相の君
「ほほほ、よろしくお願いもうしあげますわ。露草さま。」




露草
「まあ…とてもうれしいです。あなたは手(書)がうまいのね。」




宰相の君
「ほほほ、人並み程度には…。」




露草
「人並み…?」




宰相の君
「いえいえ。私のおばが書にすぐれた文を集めておりますの。
 きっとお役に立ちますわ。」



露草
「まあうれしいわ。もっと近くにお寄りになってね。」




ずりずりずり


宰相の君
(非常に素直な人種だわ…。これじゃ中将さまの気がわかるってものよね…
 と言いたいけど、まだ十位じゃない。中将さま…遊んでらっしゃるわね…。)



再び、宮の辺りへ


auther:Toukai Karinoko
All rights reserved .