盆の終わり、煙と盂蘭盆会の数日を送っての帰り路は、後ろを振り返ってはいけない。
子らがその愛しい顔を向けると、逝った人々は心が残って還れなくなってしまって、ついてきてしまうらしい。
子供の私は、繋がれた手に必死で縋って、祖父母の家の、薄い鉄の扉を思った。
絶対に振り返るまいと固く誓って。
想像ゆたかで、臆病な性質の子供ではあったけれど、現在も忘れないくらいその畏怖は鮮明だ。
なぜ、そんなに怖がったのか、微笑ましく思い出す。

彼岸を思う、暑い数日の終わりの宵のことだ。

子供は死がこわい。
やわらかな寝床で、ひそかな背徳感とともにくりかえす想像。
「お母さんが死んだらどうしよう」
ひとりになるそのときのための儀式かもしれないその想像は、単純な心を冷やりとさせる。
子供はひとり、布団の中で胎児のように怖いものをやりすごす。

そして
愛すべき死者への、あるいは死そのものへのごまかしようのない恐怖。



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